2014年4月7日月曜日

Beyond Transparency ("透明性"を超えて)日本語版:目次

はじめに
By Brett Goldstein

第1部:政府のデータを公開する

【仮翻訳済】第1章 ボストンの公立学校のオープンデータと開かれた論議
By Joel Mahoney


2. Open Data in Chicago: Game On 13
By Brett Goldstein

3. Building a Smarter Chicago 27
By Daniel X. O’Neil

4. Lessons from the London Datastore 39
By Emer Coleman

5. Asheville’s Open Data Journey:

Pragmatics, Policy, and Participation 51
By Jonathan Feldman

第2部:オープンデータを構築する

6. From Entrepreneurs to Civic Entrepreneurs 65
By Ryan Alfred and Mike Alfred

7. Hacking FOIA: Using FOIA Requests to Drive Government Innovation 81
By Jeffrey D. Rubenstein

8. A Journalist’s Take on Open Data 93
By Elliott Ramos.

9. Oakland and the Search for the Open City 105
By Steve Spiker

10. Pioneering Open Data Standards: The GTFS Story 125
By Bibiana McHugh

第3部:オープンデータを理解する

【仮翻訳済】第11章 オープンデータの文化はどのように市民生活を再構築しているか
By Eric Gordon and Jessica Baldwin-Philippi


12. The Beginning of a Beautiful Friendship: Data and Design in  Innovative Citizen Experiences 151
By Cyd Harrell

【仮翻訳済】第13章 オープンデータを通じて経済価値を生み出す
By Michael Chui, Diana Farrell, and Steve Van Kuiken

14. Local Scale and Local Data 173
By Alissa Black and Rachel Burstein

第4部:データを用いて意思決定を推進する

15. Beyond Open Data: The Data-Driven City 185
By Michael Flowers

【仮翻訳済】第16章なぜ政府はデータによって意思決定しなければならないのか
By Beth Blauer

http://beyondtransparencyjpn.blogspot.jp/2014/03/416DataDrivenDecision.html

17. Beyond Transparency: Louisville’s Strategic Use of Data to Drive Continuous Improvement 211
By Theresa Reno-Weber and Beth Niblock

18. Benchmarking Performance Data 233
By Ken Wolf and John Fry

第5部:将来を見据えて

19. Towards a Community Data Commons 255
By Greg Bloom



【仮翻訳済】第20章. これからのオープン・ガバメントに関する10の教訓
By John Bracken

http://beyondtransparencyjpn.blogspot.jp/2014/03/520GOVUKBiggerPicture.html



21. New Thinking in How Governments Deliver Services 277
By Mark Headd



【仮翻訳済】第22章. オープンデータとアルゴリズム規制
By Tim O’Reilly



【仮翻訳済】第6部 おわりに:次に来るものは何か?
By Abhi Nemani

http://beyondtransparencyjpn.blogspot.jp/2014/03/6Afterwprd.html

第5部:将来を見据えて

将来を見据えて

open data movement をさらに進める上では何が必要なのだろうか?どのような、障害、挑戦、懸念に対応していかなければいけないのか?第5部ではこれらの課題を確認し、オープンデータによるcivic innovationの将来を想像したい。 最初に、ワシントンD.C在住、長年にわたってより良いsocial services data を提唱し続けた、グレッグ・ブルームが公益としてのオープンデータという考えに関して考察している。

第19章において、ブルームはthis public resource(=social services data ?)のより良い維持管理を確実にする未来のdata cooperativesのビジョンを紹介している。

第20章では、open government initiativesの最大の支援団体の一つである、ナイト財団のメディア・イノベーション部長John Brackenが担当している。ナイト・ニュース・チャレンジ(世界のジャーナリズムを革新するための、デジタル・メディア実験コンテスト)を運営した彼の経験から、コミュニティがopen government movement を次のレベルに押し上げる、そしてオープンデータの可能性を最大限活用できるようにするために必要な10の重要な教訓を語ってくれている。

次に、第21章では、フィラデルフィア市、初のChief Data Officer、Mark Headdが、オープンデータは行政サービス提供の新しいアプローチに拍車をかける重要な第一歩であると提案している。 彼は、政府がテクノロジーを手に入れる方法を変える理由は、市役所内の文化及び業務の両側面に及ぶ大きな変化を可能にするためであると語っている。

そして最終第22章では、オープンガバメントの伝道師である、ティム・オライリーが、algorithmic regulationに関する彼のビジョンを語ることによってこの本を纏めている。どのようにしたら政府は、より効果的な規制及び統治を呼び起こせるセンサー技術の進歩、シェアリング・エコノミーの発現 のようなイノベーションによる優位性を持てるのか?彼は、明確な目的と明瞭な分析を伴ったオープンデーターが21世紀の政府にaccountability and continuous improvementをもたらすための重要な助力者に違いないとしている。

(翻訳:川北博史)

第4部:データによる意思決定の推進

データによる意思決定の推進

地方自治体がより良い意思決定をするためのツールとしてオープン・データに着目するーつまり透明性を越えて稼働することで、自らがデータ駆動型な存在になる時ー、何が起きるのでしょうか?このセクションでは、公共利用のオープン・データだけでなく、業務プロセスや政策、資源配分を継続的に改善するために内部でデータを活用しようとする地方自治体へ支援する実務家からお話を伺い、その背後にある理論的根拠と結果を共有します。

15章では、ニューヨーク市で最初の最高分析責任者であるマイク・フラワーが、地方自治体主導による実際のサービス配送の改善を効率化するために予測データ分析を適用した、ニューヨーク市の成功について説明します。彼らの自助努力は、既存のオープンデータセットの活用に基づいて始まっており、これらのプログラムの成功と拡大について順を追って描写します。

次に第16章では、ベス・ブラウアーが、メリーランド州知事のマーチン・オマリーと共に初めて行った州全体でのパフォーマンス改善プログラム構築についての経験談を共有します。彼女は、そのプログラムを構築している間に、彼女が学んだ重要な成功要因について文書化しており、他の地方自治体が容易にパフォーマンス管理プログラムを適用できるよう支援するオープン・データのプロバイダーであり民間セクターのSocrataにおいて、現在この文書がどのように使われているかについて共有します。

第17章では、州統計(StateStat)のアプローチによるルイビルの革新に関するケーススタディを紹介します。ルイビルのテレサ・リノ=ウェーバー(パフォーマンス管理責任者)とベス・ニブロック(最高情報責任者)はLouieStatプログラムを通じてパフォーマンス管理のためのオープン・データの具体的な成果を説明します。それは、予定外の残業に費やされていた毎年3百万ドル分の還元を含むものです。リーン・スタートアップでいう「実用最小限の製品」モデルのルイビルにおける採用に焦点を当て、国中の都市がより少ないリソースでより多くを実行する能力の構築を支援するオープン・データの利用について推測します。 ケン・ウルフとジョン・フライは、地方自治体に対するパフォーマンス管理ソフトウェアの適用について多くの実績を有しています。それは他都市におけるデータ主導のパフォーマンス管理の事例に基づいて構築され、長期間の協調的ベンチマーキングの概観と都市間の比較優位における成功事例を共有するものです。第18章では、彼らはこうした機会が存在する初期の兆候と、さらに機会を得るために必要なものについて共有します。

(翻訳:瀬戸寿一)

第3部:オープンデータを理解する

オープンデータを理解する


編集ノート このセクションでは政府データを公開することの、より大きな意義のいくつかを探っていきます。業界専門家により、私たちの公共や民主主義のプロセス、経済にあらわれた影響を概観します。また、この潜在的変容による利益を実現するためどのような要素が必要になるかをはっきりとさせます。

第 11 章ではエリック ・ ゴードンとジェシカ ・ ボールドウィン フィリッピがオープンデータムーブメントとは単に政府のデータにアクセスするということを意味するのではなく、政府が持つデータという見方から市民が権利を持つ公的な資産であるという見方への変換を意味すると主張しています。この変更の結果、多くの新しいツールが開発され行政サービスへの協働や積極的な市民参加へ役立てるため個人的なデータを提供することが促進されます。ここでは、このオープン データの文化が持続的な市民参画と積極的な学習につながるより良い市民の姿勢にどのように関与するかを説明します。

このテーマに基づき、第 12 章ではユーザーエクスペリエンスの専門家シド・ハレルがオープンデータに適応されるデザイン原則を探り、市民生活と関与においてオープンデータのメリットを実現するには市民中心のアプローチが鍵であると主張します。

次に、マッキンゼー・グローバル・インスティチュートのマイケル ・ チューイ、ダイアナ・ファレルと、スティーブ ・ ヴァン ・クイケンはオープンデータがいかに経済的価値をを生み出すかについて第13章で検討します。彼らはオープンデータに関わるリーダーシップがその潜在的価値を発揮させるために考慮すべきポイントについてのフレームワークを提供しています。

そして第 14 章ではニュー アメリカ ファウンデーションのアリッサ・ブラックとレイチェル・バースタインがオープンデータによるイノベーションを地方レベルで行うことにより、市民生活の改善と行政が住民により適応しすばやく対応できる独自の機会を持つことについて話しています。彼らはオープンデータムーブメントから小さくて予算の少ない自治体が省かれることに警告を与え、全ての種類の地方自治体が含まれる市民イノベーションの革新を確かにするいくつかのステップについて概観しています。

(翻訳: 柴田重臣 (e-mail))

第2部:オープンデータを構築する

オープンデータを構築する

公的データが公開された時、それは何の為に、誰によって使用されるのだろう? 実際に起こりつつある、そしておそらく予想もされていなかった、その使用例とはどんななものだろう?第二部では、私達は複数のオープンデータの利用者、ー 起業家、自治体の世話役、公務員、そして既存の企業 ー に聞き取りを行い、そして彼ら利害関係者がオープンガバメントデータを使って何を行い、何を学んだのかについて検証した。

まずブライトスコープの共同創業者であるライアン、そしてマイク アルフレッド両氏による第6章から始めよう。彼らの物語は実はオープンデータで始まるものではなく、その前史から始まる。彼らは自分たちのビジネスを立ち上げる為に米連邦政府機関と協働し、数値データ化した政府記録の公開に取り組んだ。その過程で彼らは企業設立に成功しただけではなく、協働相手となった政府機関の中にオープンデータとの親和性の高い文化を作り出した。彼らは自身が得た教訓を公共データ活用の分野で起業を目指す起業家達と共有し、この分野に新しいスタートアップ企業が参入する際の障壁を削減する為のデータ標準化推進の重要性について論じてくれる。

第7章では、FOIAを政府改善の為の土台に変容させる為のモデルを構築したもう一つの市民スタートアップであるスマートプロキュアから話を聞くことにする。創業者のジェフリー ルーベンスタインが政府が購入したデータを、所管をまたぐ形で集約化、標準化そして数値化する事で、オープンデータが実際に政府機関同士の連携を増やし、それらの意思決定をより情報に裏打ちされたものにする一助となることについて論じている。

第8章ではシカゴのレポーターであるエリオット ラモスからジャーナリストとオープン・データとの関係について聞く。 同人はシカゴ市の新しいオープン・データ構想によって入手可能となったガバメント・データの急増が、どの様に地域ニュース取材のやり方を変え、そして新しい形式での記事執筆を可能にしつつあるかを説明してくれる。 スティーブ スパイカーはオークランド市のイノベーションを支援する組織である都市戦略評議会の調査担当ディレクターとして26年近くに亘り奉職し、しばしば政府保有データを自分たちのプロジェクトで活用してきた。

第9章では彼はオークランド市において高まったオープン・データを巡る活動が自治体のオーガナイザーやリサーチャー達のの活動にどの様な影響を与えたかについて述べ、同時に限られた範囲でのデータの開示に基づく「開かれた政府」実現への過剰に楽観的な見方に対して警鐘を鳴らしている。

最後に第10章ではオレゴン州ポートランド市のトライメット エージェンシーのビビアナ マクハが世界中の数百の行政府によって現在使用されることになったグーグル用の乗継情報の標準データ形式を開発した経験について書いている。それは公共交通機関の乗継情報を自動車運転の道順案内の様に容易に入手出来る様にするものである。彼女は人々が情報を求めて既に集まっているプラットフォームやサービスにあとからオープン・ガバメント・データを持ち込む際の官と民の間の連携の重要性について論じている。

(翻訳: 柴田重臣 (e-mail))

第1部:政府・自治体のデータを公開する

政府・自治体のデータを公開する

パート1では、政府のデータの公開にともなう課題や成果について、実際の事例を通じて考察を行いたい。

第1章では、ソフトウェア開発者でありCode for Americaのフェローでもあったジョエル・マホニーの事例を取り上げます。ボストンで1960年代から議論の的となっていた公立学校への生徒割り当て問題について、政府の公開データの利用がどのような変革をもたらしたか、マホニー自身が回想しました。彼は、オープンデータが単に公開情報に基づく議論に貢献するだけでなく、社会的な価値を持つ解決に向けた政策の推進に向けて重要な役割を持つ点を指摘しています。(補足:このプロジェクトの仲で、彼は課題を解決するためにDiscoverBPS.orgという公立小学校選びのためのサービスを開発しました)

第2章では、米国内で最も包括的にデータ公開の仕組みを構築した自治体の一つであるシカゴ市を取り上げます。当時、シカゴ市のチーフ・データ・オフィサー(CDO)として仕組み化を推進していたブレット・ゴールドスタインが、プロジェクト中に市役所の中でどのような取り組みが行われたか見聞きしたことをもとに、「いかにテクノロジーを使って持続可能なデータ公開・共有のインフラを構築するか」について語ります。

第3章では、シカゴ市のオープンデータ推進戦略を別の視点から検証します。スマート・シカゴ・コラボレイティブというシカゴ市の課題をテクノロジーで解決する市民団体の代表ダニエルX.オニールは、現在2つのプロジェクトに携わっています。シカゴ市のオープンデータ推進チームと、地域でオープンデータを活用した課題解決を行う市民グループです。その視点から、彼はシカゴ市において「持続的なオープンデータ活用のエコシステム」を実現している「データ」「政策」「開発者」「資金」「プロダクト(成果物)」における重要な構成要素は何であるか解説しています。

第4章では、大都市における行政データ公開・共有の取り組みとして主要な事例である「ロンドン・データストア」について取り上げます。創設メンバーであるエマー・コールマンが、アメリカにおけるデータ公開とは違う文脈で、「ロンドン・データストア」の成り立ちや先行して検討された政策、公共空間におけるデータ公開の課題について語ります。

最後の第5章では、予算や人員などリソースが不足している小都市において、データ公開がどのようなインパクトをもたらすかについて考察します。ノースカロライナの都市アッシュビル(人口85000人)のCIOジョナサン・フェルドマンが、小規模な自治体特有の課題や可能性について指摘をしながら、長期的な投資としてのオープンデータ施策について語ります。アッシュビルでの新しいオープンデータ施策が都市のリソース効率化に果たした役割を紹介し、他の都市に対してオープンデータの実用性について検討するように勧めています。

(翻訳:後藤真理絵)

2014年3月29日土曜日

第6部:結びに:次に来るものは何か?

21世紀の二項対立原理は右か左かではない、開かれた社会かそうでないかなのだ。
—アレック J ロス

本書にも示されているとおり、オープン・データ・ムーブメント初期にデータは確かに、新しい政策ポリシーを定めたり、新ビジネスの機会を創出したり、行政サービス提供方法を最適化したりするために重要な役割を果たすでしょう。アシュビルから始まり、ポートランド、シカゴ、そしてロンドンまでの都市はオープン・データを開放することで地方レベルから国家レベルにいたるまで数十億ドル規模の経済活動を触発し、メリーランド州の児童福祉政策やルイビルの公共事業のような市民サービスの中心となる事業はデータに基づき常に革新されています。このような行政による戦術的強化を超えて、市民の行政に対する信頼の増加とさらなる行政参加という文化的、社会的シフトが発生しています。

しかし、いまだにオープン・データ・ムーブメントに対する古い考え方が残っているとみられます。長い目で見た現在の努力の成功は単に今の効率性ではかられるだけではなく、より難しい論点や新しい問題にたいする未来の行動を促進する能力によってはかられるべきです。個人データやプラットフォームの統合、部署間の調整など難しい分野から進歩が始まったとはいえ、われわれはまだほんの表面をひっかいているだけなのです。オープン・データが主流になるにつれ、政治的、哲学的問題が前面に出てきています。われわれはいかに社会的包括をデザインするのか?プライバシーとオープン性の両立はどうするのか?われわれはこのような問題に次は対処していかねばなりません。

このような問題に対処し未来の機会を実現するため、事例からの学びを心に留める必要があります。データはあくまでも道具-それも時にはなまくらなーものです。道具は使い手により初めて役に立つものとなります。オープン・データ・ムーブメントは透明性を最終目的するのではなく、ひとりひとりの選挙民がデータの使い手となることを意味するのです。”いかにオープン・データをすすめるか”は行政だけへの問いではなく、また”データを利用して何を構築するか”も市民向け起業家だけへの問いというわけではありません。ニューヨーク市はデータ解析を行うとても印象的なアプリケーションの開発を始めました、一方、ブライトスコープ社は数百万行のデータをオープンにしてきました。スマートシカゴ協働プロジェクトや、フィラデルフィア市の最高情報責任者、そしてスマート購買プロジェクトでもデータを使い政策ポリシーの変更を進めました。市民ハッカーとジャーナリストはデータを利用可能にし、より意味のあるものにするために重要な役割を果たしてきました。

詳細な部分は本書に載っていますが、予期もしなかった市民によるオープン・データの使い手がわれわれの社会の全ての分野から生まれてくる数え切れないほどの事例が他にもあります。このように、オープン・データはわれわれの持つ公共と個人の線引きをぼやかすようになり、消費者、市民、公務員をふたたび結びつけています。未来を見つめると、このことはオープン・データの偉大な伝統の一部となるかもしれません。新しい種類の結合された組織の台頭が21世紀に適応した人民の人民による政府を築き上げることを可能にするのです。
### 著者について

アビ・ネマニはCode for America(CfA)の(暫定)共同執行役員です。ほぼ4年にわたってアビはCfAの戦術的開発および発展を率いており、いくつもの新規プログラム(まったく新しい市民起業家向け援助プログラムや都市どおしの協業を助けるCfA ピアネットワーク)の開発をしています。アビは世界中のカンファレンスや種々の大学、世界銀行や、SxSWでのスピーカーとして講演も行っています。彼はクレアモント・マッケンナ・カレッジで哲学、政治学、経済学の学位を取得、優等で卒業しています。

(翻訳: 柴田重臣 (e-mail))