2014年3月29日土曜日

0_Preface

     ブレッド・ゴールドステイン
     前チーフ・データ・オフィサー
     シカゴ市
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     twitter: bjgol  
     著者について:シカゴ市チーフ・データ・オフィサーを経て現在はシカゴ大学ハリス公共政策大学院アーバンサイエンスフェロー

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公共的なセクターにおけるオープン・データの盛り上がりはイノベーションを生み出し、効率化が推進され、経済発展ももたらした。Data.govやホワイトハウスのオープン・ガバメント・イニシアティブなど注目を浴びる連邦政府のイニシアティブだけでなく、各地方政府レベルにおいても、チーフ・データ・オフィサーの任命、オープン・データ・ポリシーやオープンデータ・ポリシーの採択などの新しい取り組みを始めている。

端緒についたばかりではあるが、私たちは将来の都市を形成する際にオープン・データが果たす変革可能性の証拠を目にしつつある。きれいな公園をもたらしたり、犯罪と闘ったり、許可を発行することで新しいビジネスを始めたり、そういった市民の生活に政府が直接インパクトを与えているのは市のレベルで起きているのだ。地方都市こそが、オープン・データを活用することで市民と政府との関係性を再考する最大の機会がある場所となっているのだ。

機運が高まり、社会規範も整う中で、私たちはムーブメントの軌道における重要なターニングポイントを迎えることになる。私たちはコミュニティとして思慮深く、注意深く、順応性を持つことが求められている。私たちは今後意義のある、持続可能な成果に辿り着くために、今までに何がうまくいき、今後何を学ぶ必要があるかを確認し、振り返る必要があるのだ。

『Beyond Transparency(透明性を超えて(仮))』は、領域横断的なオープン・データの展望についての研究であり、様々な分野の実践者がオープン・データに取り組むことで成し遂げた成果についての経験を共有している。それは透明性のための透明というレトリックを超え、実際の行動や問題解決に繋がることを目指している。オープン・データが原動力となる変革のエコシステムは、より効果的な意思決定やより効率的なサービス提供を可能にし、それは経済活動を刺激し、市民が自分たちのコミュニティでアクティブな役割を果たすことを力づける。私たちは様々な事例やストーリーを通じ、変革のエコシステム構築のために何が必要かを探求する。 

本書執筆までの経緯

本書執筆のきっかけは私がシカゴ市のチーフ・インフォーメーション・オフィサーとして勤務していた時に遡ります。当時私はシカゴ市のオープンデータを活用した「成功物語」をいかに他の都市で再現することが出来るかについて大量の問い合わせを受けていたのです。ある特定のベンダープラットフォームを活用した運用事例についてはいくつかのエッセイが書かれていました。それは価値あるものでしたが、私は更に広義なアプローチが必要であると感じていました。そしてよりそのことを考えているうちに、今こそがオープン・シビック・データなどについての成功や学び得た教訓を記録するガイドブックのようなものが必要なときなのではないか、と思うようになりました。

2012年、コード・フォー・アメリカのシカゴ市でのフェローシップ・プログラムを通じてコード・フォー・アメリカの創業者のジェニファー・パルカ氏と知り合いました。その後も彼女とはシカゴ市におけるコード・フォー・アメリカの仕事に関する意見交換を通じ信頼に足る関係を築くことができましたし、オープンガバメントやシビックイノベーションに関する一連のカンファレンスやミーティングで継続的に顔を合わせる機会がありました。私がシビックオープンデータについてのマイルストーンについてのアイディアを一歩進めようと考えていた時、協力者として彼女のことがすぐに頭に浮かびました。

私は大きなアイディアを持って「オープンデータついての本を書こう」とジェンに連絡をしました。互いに忙しい二人にとってそれは困難な仕事のように思えましたが、データに関する業界の主要な人物、そしてコード・フォー・アメリカのリソースを活用するというプランに至りました。ジェンは非常に乗り気で、このプロジェクトをサポートするためにコード・フォー・アメリカのチームを集めてくれました。それから数ヶ月の間には各チャプターのドラフトが出来上がり、書籍のアウトラインが仕上がってました。素晴らしいアイディアが迅速な実行力と組み合わされ、多くの点においてこの本が作られたことそのものがオープンデータムーブメントの原則を体現していたと言えます。

この本が求めること

『透明性を超えて』は、市町村レベルのチーフ・インフォメーション・オフィサー、コミュニティオーガナイザー、市民的なマインドを持った起業家に至るまで、政府の内外における実践者のためのリソース・資料であり、また彼らによって作成されたものです。私たちはこの本を通じていくつかの具体的なことの実現を目指します。

地方の政府機関でオープンデータプログラムを始めたい場合は、ここで描かれている教訓によりまさしく同じことを実践していただく一助となることを希望します。

オープンデータが今後どこに向かうかについて、また私たち実践者がいかに賢く、効果的、広くインパクトを与えられるようになるかについて、ディスカッションを引き起こしたいのです。

私たちはそれが技術者であれ、そうでなくとも、政府機関の外部のコミュニティメンバーのコミュニティを支援し、統治プロセスを改善し、公的機関を改善したいのです。

そしてオープンデータ・コミュニティの様々な活動の発信力を高めたいのです。本書では公務員、コミュニティ・オーガナイザー、NGO団体、技術者、デザイナー、リサーチャー、ジャーナリスト、市民に至まで、オープンデータのエコシステムを構成する多様な実践者の視点に触れることができます。「Beyond Transparency」の中では、様々な分野を横断して活躍する第一線のイノベーターやリーダーのストーリーをまとめました。オープンデータを活用することでいかにこれまでに成果をあげたか、そのプロセスでどんな学びを得たか、そしてそれらの教訓を適用することでいかにアメリカの各都市の有望な未来を実現することが出来るかについて学ぶことができます。彼らが今までに達成したこと、未達成のことを振り返ることで、彼らの物語を通じて思いがけない新しいテーマについての共感を呼び起こすことでしょう。

本書のタイトルが示すとおり、私たちのコミュニティは単なる透明性の原則を超え、オープンデータの取り組みを政策目標と連携させ、本当に大切な問題解決し、限られたリソースを適正配分するためのよりよい判断のために活用すべきであることを認識しつつあります。私たちは繰り返し市民中心のデザインの必要性を耳にしますが、それらはユーザー・エクスペリエンス分野で見られる、単に「オープン」なものから本当の意味で使えるものであり公的にアクセス可能なデータへ移行する原理を当てはめるものです。多くの実践者はあらゆるタイプの市民データにおけるオープンデータ・スタンダードの必要性を引用しますが、それは相互運用性を増し、インパクトをより規模の大きなものにすることが出来るからです。これらは本書に集められたストーリーから導きだされるアイディアや教訓の単なる一部です。

未来を見渡すと現在はとても刺激的な時代といえます。私たちはオープンデータの価値を証明することができましたし、シカゴからノースカロライナのアシュビルなど、あらゆる規模の都市で短期間のうちに実現可能であることを示しました。そして今、これまでに始められた仕事を続けていくのは私たち全ての肩にかかっています。

謝辞

私が山のようなプロジェクトを続けるにあたり、妻のサラの寛容さは素晴らしいものでここに感謝します。コード・フォー・アメリカのローラ・ダイソン氏とその他のメンバーには本書執筆の着想を実現させてくれたことに感謝します。シカゴ市におけるオープンデータの取り組みを今日の姿にするため支援をしてくれたラーム・エマニュエルシカゴ市長にも感謝します。そして何より、本書の中で取り上げられている取り組みの当事者である実践者のコミュニティに感謝します。あなたたちの創意、努力、イノベーションに対するコミットメントがあったからこそ、オープンデータにより力を得た、より強い公的な領域への路が照らし出されるのです

翻訳:市川裕康

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