2014年3月29日土曜日

第6部:結びに:次に来るものは何か?

21世紀の二項対立原理は右か左かではない、開かれた社会かそうでないかなのだ。
—アレック J ロス

本書にも示されているとおり、オープン・データ・ムーブメント初期にデータは確かに、新しい政策ポリシーを定めたり、新ビジネスの機会を創出したり、行政サービス提供方法を最適化したりするために重要な役割を果たすでしょう。アシュビルから始まり、ポートランド、シカゴ、そしてロンドンまでの都市はオープン・データを開放することで地方レベルから国家レベルにいたるまで数十億ドル規模の経済活動を触発し、メリーランド州の児童福祉政策やルイビルの公共事業のような市民サービスの中心となる事業はデータに基づき常に革新されています。このような行政による戦術的強化を超えて、市民の行政に対する信頼の増加とさらなる行政参加という文化的、社会的シフトが発生しています。

しかし、いまだにオープン・データ・ムーブメントに対する古い考え方が残っているとみられます。長い目で見た現在の努力の成功は単に今の効率性ではかられるだけではなく、より難しい論点や新しい問題にたいする未来の行動を促進する能力によってはかられるべきです。個人データやプラットフォームの統合、部署間の調整など難しい分野から進歩が始まったとはいえ、われわれはまだほんの表面をひっかいているだけなのです。オープン・データが主流になるにつれ、政治的、哲学的問題が前面に出てきています。われわれはいかに社会的包括をデザインするのか?プライバシーとオープン性の両立はどうするのか?われわれはこのような問題に次は対処していかねばなりません。

このような問題に対処し未来の機会を実現するため、事例からの学びを心に留める必要があります。データはあくまでも道具-それも時にはなまくらなーものです。道具は使い手により初めて役に立つものとなります。オープン・データ・ムーブメントは透明性を最終目的するのではなく、ひとりひとりの選挙民がデータの使い手となることを意味するのです。”いかにオープン・データをすすめるか”は行政だけへの問いではなく、また”データを利用して何を構築するか”も市民向け起業家だけへの問いというわけではありません。ニューヨーク市はデータ解析を行うとても印象的なアプリケーションの開発を始めました、一方、ブライトスコープ社は数百万行のデータをオープンにしてきました。スマートシカゴ協働プロジェクトや、フィラデルフィア市の最高情報責任者、そしてスマート購買プロジェクトでもデータを使い政策ポリシーの変更を進めました。市民ハッカーとジャーナリストはデータを利用可能にし、より意味のあるものにするために重要な役割を果たしてきました。

詳細な部分は本書に載っていますが、予期もしなかった市民によるオープン・データの使い手がわれわれの社会の全ての分野から生まれてくる数え切れないほどの事例が他にもあります。このように、オープン・データはわれわれの持つ公共と個人の線引きをぼやかすようになり、消費者、市民、公務員をふたたび結びつけています。未来を見つめると、このことはオープン・データの偉大な伝統の一部となるかもしれません。新しい種類の結合された組織の台頭が21世紀に適応した人民の人民による政府を築き上げることを可能にするのです。
### 著者について

アビ・ネマニはCode for America(CfA)の(暫定)共同執行役員です。ほぼ4年にわたってアビはCfAの戦術的開発および発展を率いており、いくつもの新規プログラム(まったく新しい市民起業家向け援助プログラムや都市どおしの協業を助けるCfA ピアネットワーク)の開発をしています。アビは世界中のカンファレンスや種々の大学、世界銀行や、SxSWでのスピーカーとして講演も行っています。彼はクレアモント・マッケンナ・カレッジで哲学、政治学、経済学の学位を取得、優等で卒業しています。

(翻訳: 柴田重臣 (e-mail))

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